巨大化する怪物

夢の中の出来事を覚えていることはよくある。
けれどその世界は、現実と似ているようで違った風景が広がっている。


二度寝して見た夢は、現実と大差ない世界が広がっており、一風変わった内容の夢だった。



薄暗い日の午後。
もうすぐ夕闇が迫ってくる頃。
自宅の部屋に戻ると、ベッド横の壁…天井に近い所に動くモノがいることに気付いた。
部屋の中は既に影を落としており、その特に暗い一角でうごめく「黒い何か」に
目を凝らす。
何となく形が浮かび上がってくる。


サラマンダー?

腕には乗る位の大きさの爬虫類が張り付いていた。


不思議に思っていると、ソイツの真っ黒な体に光りの筋が走った。
細く白い光りが、頭部側から尾にかけて幾筋も表れていく。


尋常ではない!
そう思うと同時に、体が少し大きくなり、段々と活発な動きを始め、こちらに近づいてきていることにも気付いた。


慌てて隣室にいた弟達に知らせ、自分は先に外に飛び出した。
自分が狙われている、そんな確信があった。
直ぐに追い付かれてしまう予感もあった。


目的地は湖。
船に乗り、水上へ逃げれば、猪突猛進してくるソイツは水中へと姿を消すだろう。


まだ自宅前の道を急ぐ間に、上の弟が追いかけてきた。
遅れて下の弟。折り畳みの地図を広げた位の大きさの、模様の様な図の描かれた布を手にしていた。

ふと後ろを振り向くと、コールタールが人に近い形をしたようなヤツが後を追って来ているのを確認した。
まだ膝位の大きさしか無かったが、時間と共に力をつけ、成長しているらしい。



突き当たりの道に出て、グラウンドで体を動かしている友人達に出会った。
移動しつつも会話をし、少し息を整えた。
暫くすると遠くから聞こえた悲鳴を合図に、再び歩を早めた。


1人で湖沿いの遊歩道に出ると、嵐の前触れが如く波が打ち寄せていた。
船を出すことは無理かもしれない…。
そんな不安が頭を過ぎったが、そんな弱音を吐いてはいられない。そこに居た漁師に丁度良い船はないかと聞きながら歩いた。
目につくのは、手漕ぎボート半分程しかないような、不自然な大きさの船ばかりで、こんなもので荒れた海に出たら直ぐに転覆してしまうだろう。


後ろを振り返ると、弟達が追い付いてきており、その後ろには周辺に居た人々が私の後を追うように、騒ぎながら逃げてきているのが見えた。


その後ろには……人々を見下ろす程に巨大化したヤツがいた。
ドラクエのボス戦や、メガテンに出てきそうな…エイリアンや神様を彷彿とさせる風貌をしており、セピアのような色をしていた。
身長は2メートルを軽く超えているだろう。


どうしよう!?



・・・自信は無いけどやるしかないか。

下の弟はそう言うとヤツに近付いて行き、あの布のようなものを広げ、そこに書いてある文章を読み上げだした。
呪文のようなものだったのだろうか・・・。
ヤツは一瞬にして目の前から消え去った。


喜んで近付こうとしたその時、声が聞こえた。
「こんなものでは本当に消えないがな」



どうすれば!?そう思った時に目が覚めた。


面白かった。笑